用語の読み方: 不当廉売関税(アンチダンピング)はどう決まり、いつ効くのか「安売りしすぎ」に国がかける税のしくみ
ニュースで「アンチダンピング関税」と呼ばれる制度の正式な名前は不当廉売関税です。正常価格より低い輸出価格で販売された貨物の輸入により、国内で同じ貨物を作る産業に損害等が生じる場合に、割増の関税を課します。令和8年10月27日に公表されたニッケル系ステンレスの事例を題材に、調査から課税までの流れと、輸入する側・国内で作る側それぞれの見方を整理します。
- ①調査の開始調査を始めたことが公表される
- ②仮の決定不当廉売と損害の事実を推定し、暫定的な関税を課すことがある
- ③期間の延長必要に応じて調査の期間が延長される
- ④答申関税・外国為替等審議会の答申が提出される
- ⑤課税の決定税率と期間を定めて課税することが決まり、政令が公布される
要点
- 制度の目的: 正常価格より低い輸出価格で販売された貨物の輸入により、輸入国内で同種の貨物を生産する産業に損害等が生じる場合に、国内産業を保護するため割増の関税を課す。世界貿易機関の協定でも一定の規律の下に認められている
- 手続きの流れ: 調査の開始が公表され、必要に応じて不当廉売と損害の事実を推定する仮の決定(暫定措置)が行われ、調査期間が延長されることもあり、最後に課税の決定に至る
- 事例でみる期間の長さ: ニッケル系ステンレス冷延鋼帯及び冷延鋼板の件では、令和7年7月22日に調査を開始し、令和8年7月9日から暫定的な課税、令和8年10月19日に関税・外国為替等審議会の答申、10月27日に課税の決定が公表された。調査の開始から1年3か月あまりかかっている
- 効き方: 同じ事例では税率は3.6%から42.1%、期間は令和8年10月31日から令和13年10月30日までの5年間と定められた。暫定措置と本措置で税率は同率だった
- 見るときの要点: 対象は「品目」と「原産地」の組み合わせで決まる。同じ品名でも原産地が違えば対象にならないことがあり、該否の判定は通関の実務になる
実務での対応
- 輸入している品目について、調査が始まっている案件がないかを財務省の公表で定期的に確認する(調査の開始も公表される)
- 暫定措置の段階から課税は始まるため、ニュースで「調査開始」を見たら仕入先・原産地の切替えの余地を早めに検討しておく
- 対象に当たるかどうかの最終的な判定は、税関または通関業者に確認する
外国の会社が、自分の国で売る値段よりずっと安い値段で日本へ物を売ると、日本で同じ物を作っている会社は、どんなにがんばっても勝てません。そこで国は、そのような輸入品に追加の税をかけることができます。これを不当廉売関税といいます。世界の国々の約束でも、決まりを守る限り認められています。
- 令和7年7月22日国が調べ始めた
- 令和8年7月9日仮の税がかかり始めた
- 令和8年10月27日正式に税をかけると決まった
- 令和8年10月31日5年間の税がスタート
ポイント
- 日本で同じ物を作る会社が本当に損をしているかを、国が時間をかけて調べる
- 調べている途中でも、ひどいと分かれば「仮の税」を先にかけることがある
- 最後に、税の割合と何年かけるかを決めて、正式に税をかける
ことばの意味
- 不当廉売
- 自分の国で売る値段よりずっと安く、外国へ売ること
- 暫定措置
- 調べている途中で、とりあえず先にかける仮の決まり
- 原産地
- その品物がどこの国・地域で作られたか
経済ニュースは公表された統計・見通しの紹介であり、投資の勧誘や売買の助言ではありません。数値は公表時点のもので、改定されることがあります。
この記事は官公庁の公表資料を要約・解説したもので、個別の事案への助言ではありません。制度は改正されることがあるため、実際の手続きや判断は必ず公表元の最新の資料や、税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。