日銀総裁がIMFで講演 企業の純貯蓄と対外直接投資が経常収支黒字を支えると説明日本が海外から受け取るお金で黒字を保っているという話
日本銀行は11月7日、植田和男総裁がIMFのミシェル・カムデッシュ中央銀行講座で行った講演(11月6日)の邦訳を公表しました。日本の経常収支は1980年代初頭までは赤字と黒字を行き来していましたが、その後の40年程度は概ねGDPの2〜4%の範囲の黒字が続いています。講演は、その黒字を支えてきたのが家計や政府ではなく、純貯蓄主体へ転じた企業部門の行動であると説明しています。
1980年代半ば現在
貿易収支の黒字(GDP比)4%以上赤字に転じた
第一次所得収支の黒字(GDP比)ほぼゼロに近い6%以上
非金融法人部門純借入主体純貯蓄主体(1990年代後半以降)
要点
- 経常収支の内訳が大きく変わった。1980年代半ばに貿易収支の黒字はGDP比4%以上だったが、その後減少して赤字に転じた。一方、当時ほぼゼロに近かった第一次所得収支の黒字は現在GDP比6%以上まで拡大し、海外投資から得られる純所得が黒字の主要な構成要素になっている
- 家計の純貯蓄は1990年代半ばまで経常収支黒字の主要な構成要素だったが、高齢化が進むなかでその後の30年間に大幅に減少した。政府部門では財政赤字の拡大基調が続いた
- それでも黒字が消えなかったのは非金融法人部門の行動による。1990年前後の投資ブームの後、企業の投資率は20年にわたり低下する一方で貯蓄率は上昇し、1990年代後半に純借入主体から大幅な純貯蓄主体へ転じて現在に至っている
- 2012年以降は対外直接投資がポートフォリオ投資を上回り、日本の資本流出の主要な構成要素になった。対外直接投資の収益率は、バランスシート調整期が終わった後の多くの期間で8%を超える水準を維持した
- 日本銀行が2024年に行った企業調査では、1990年代半ば以降に国内投資が低調だった理由として構造的な「成長期待の低下」が最も頻繁に挙げられた。1990年代・2000年代は「債務圧縮・財務改善圧力」が支配的で、2010年代は将来に備えた現預金の蓄積や海外での合併・買収が挙げられた
対象:海外に子会社や取引先を持つ企業の経営者と財務担当者。設備投資や海外展開の判断材料として、国内の資本収益率や対外投資の環境を見る人
実務での対応
- 自社の設備投資の判断で国内の成長をどう見込んでいるかを言葉にして、講演が示した企業部門全体の傾向と照らしてみる
- 海外子会社の利益を現地に留保しているか日本へ戻しているかを整理する。講演は、留保された収益も統計上は日本企業の貯蓄として扱われ、再投資分は新たな対外直接投資として記録されると説明している
注意:この記事は公表された講演の邦訳に書かれている内容の要約で、日本銀行の金融政策の先行きを示すものではありません。GDP比の数値は講演が図表の説明として示した水準です。個別の企業・業種への助言ではありません。詳細は公表元をご確認ください。
日本銀行の総裁が11月6日、海外の会議で講演をしました(日本語にした文は11月7日に公表)。むかしの日本は、外国にモノを売って受け取るお金のほうが多い国でした。いまはモノの売り買いだけでは足りない年もありますが、海外に作った会社や海外の株や債券から受け取る利子や配当が大きく、全体では受け取るほうが多い状態が続いています。その受け取りを増やしてきたのは、お金を貯めて海外に投資してきた会社だと説明しています。
- 1980年代半ばモノを売って受け取る黒字が大きく、国際的な話し合いの的になった
- 1990年代後半会社がお金を借りる側から、お金を貯める側に変わった
- 2012年以降海外に会社を作る投資が、お金が出て行く主な形になった
- いま海外からの利子や配当の受け取りが、黒字の柱になっている
ポイント
- むかしの日本は、外国にモノを売って受け取るお金のほうが多かった
- いまは、海外に作った会社や海外の株・債券から受け取る利子や配当のほうが大きい
- お金を貯めて海外に投資してきたのは、家庭や国ではなく会社だと説明している
たとえば:海外に工場を作ると、そこでもうけたお金の一部が利子や配当として日本に入ってきます。モノを売らなくてもお金が入ってくる形で、いまの日本はこれが大きくなっています。
ことばの意味
- 経常収支
- 国が外国とやりとりしたお金の、受け取りと支払いの差
- 第一次所得収支
- 海外への投資から受け取る利子や配当などの差
- 対外直接投資
- 海外に会社や工場を作ったり、海外の会社を買ったりする投資
出典(公表元)
公表元の確認日:2026年11月8日
経済ニュースは公表された統計・見通しの紹介であり、投資の勧誘や売買の助言ではありません。数値は公表時点のもので、改定されることがあります。
この記事は官公庁の公表資料を要約・解説したもので、個別の事案への助言ではありません。制度は改正されることがあるため、実際の手続きや判断は必ず公表元の最新の資料や、税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。