日銀 展望レポート(10月)の全文が公表 労働の供給制約で賃金・物価に上昇圧力日本銀行の全文レポート 人手が足りないと給料と値段が上がりやすい
日本銀行は2026年11月2日14時、10月29、30日の金融政策決定会合で決定した「経済・物価情勢の展望(2026年10月)」の、背景説明を含む全文を公表しました。本記事はそのうち、物価の基調を規定する要因とリスク要因に関する記述を取り上げます。労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは小幅のプラスで推移し、先行きも現状程度のプラスが続く見通しです。一方で、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって労働需給は需給ギャップ以上に引き締まっており、労働集約的な業種を中心に企業が労働の供給制約に直面しつつあることから、需給ギャップが示唆する以上に賃金や物価に上昇圧力がかかりやすくなっているとしています。
要点
- 労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは小幅のプラスで推移。先行きも、今回の経済の見通しのもとで現状程度のプラスが続くと予想している
- 女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている。労働集約的な業種を中心に企業が労働の供給制約に直面しつつあり、需給ギャップが示唆する以上に賃金や物価に上昇圧力がかかりやすくなっているとみている
- 中長期的な予想物価上昇率は2%程度。先行きも、企業の積極的な賃金・価格設定行動が維持されるもとで現状と概ね同程度の水準で推移すると考えている。基調的な物価上昇率は2%の「物価安定の目標」と概ね整合的な水準にあり、関連する各種指標の多くが2%近傍にあると注記している
- 潜在成長率は一定の手法で推計すると足もとで0%台半ばから後半と計算される。ただし推計手法や今後蓄積されるデータに左右され、相当の幅をもってみる必要があるとしている
- 見通しの前提はドバイ原油が1バレル105ドル程度を出発点に見通し期間の終盤にかけて70ドル程度まで下落する想定。ただし代替調達に伴う輸送コスト等の増加を踏まえると、日本企業が直面する調達価格は国際市況ほどには低下しないとしている。燃料油補助金などのエネルギー負担緩和策や教育無償化政策は、2026年度の消費者物価の前年比を押し下げる方向に作用する
実務での対応
- 労働需給の引き締まりが続く前提で、人手の確保と、賃上げの原資をつくる価格改定を同じ計画の中で考える
- 原油価格の前提(1バレル105ドル程度から見通し期間の終盤に70ドル程度へ下落)と、自社が実際に支払う調達価格は国際市況ほど下がらないという指摘を、仕入の見積りで分けて考える
- エネルギー負担緩和策・教育無償化政策が物価を押し下げている間と、その効果がはがれたあとで、売価と人件費の前提が変わることを確かめる
日本銀行は11月2日、10月に出した景気と物価の見通し(展望レポート)の、くわしい説明までふくんだ全文を公表しました。その中で日本銀行は、国全体の工場やお店がどれくらい忙しく動いているかを表す「需給ギャップ」は、少しだけプラスだと見ています。それでも、働く人が足りない度合いはその忙しさから考えるよりも強く、とくに人の手がたくさん必要な仕事で人が集まりにくくなっています。そのため、給料や物の値段は上がりやすくなっている、と書かれています。
- ①人が足りない働きに出る人の増え方がゆるやかになり、会社は人を集めにくくなる
- ②給料を上げる来てもらうために、会社は給料や時給を上げる
- ③値段にのせる上がった人件費の分を、商品やサービスの値段にのせる
- ④物価が上がる買い物の値段が上がりやすくなる
ポイント
- 工場やお店の忙しさを表す「需給ギャップ」は、少しだけプラスの状態が続くと見ている
- 働く人が足りない度合いは、その忙しさから考えるよりも強い(女性や高齢の方が新しく働きに出る増え方が、ゆるやかになったため)
- そのため、給料や物の値段は上がりやすくなっていると書かれている
ことばの意味
- 需給ギャップ
- 国全体の工場・お店・働く人が、どれくらい忙しく動いているかを表す目安。プラスだと忙しい方
- 供給制約
- 作りたい・売りたいのに、人や材料が足りなくてできないこと
物価の基調を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、小幅のプラスで推移している。先行きの需給ギャップは、上記の経済の見通しのもとで、現状程度のプラスが続くと予想される。この間、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、労働集約的な業種を中心に企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかりやすくなっているとみられる。
経済ニュースは公表された統計・見通しの紹介であり、投資の勧誘や売買の助言ではありません。数値は公表時点のもので、改定されることがあります。
この記事は官公庁の公表資料を要約・解説したもので、個別の事案への助言ではありません。制度は改正されることがあるため、実際の手続きや判断は必ず公表元の最新の資料や、税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。